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物件投稿はなぜ止めてはいけないのか。継続接触で選ばれる状態をつくる

この記事の要点
- 物件投稿の目的は想起され続けることにある
- 探し始める瞬間は売り手側から観測できない
- 接触回数は好意度に効く(単純接触効果)
- 物件投稿は中身が毎回変わるため飽きられない
- 人力運用は繁忙期に止まる。そこが最需要期
本記事は、InstagramのDM自動化ツール「Rox Message」を提供するRox株式会社が運営しています。
物件投稿は、何のために出しているのか?
1回の投稿で問い合わせを取るためではない。部屋を探し始めた瞬間に、自社が思い出される状態を保つためである。目的をここに置くと、投稿の評価基準が変わる。
1投稿あたりの反響で判断すると、ほとんどの物件投稿は「効果がない」という結論になる。実際、1件の投稿から直接DMが来る確率は高くない。しかし物件投稿の役割は、その1回で決めることではなく、接触を切らさないことにある。
本記事は、賃貸・売買の仲介で自社アカウントを運用している集客担当と、店舗オーナーを対象にしている。投稿は続けているが反響に結びついている実感がない、という状態を想定している。
今日の1アクション:直近3か月の投稿本数を月別に書き出す。本数が落ちた月があれば、その月に何が起きていたかを思い出す。
なぜ「探し始める瞬間」を狙い撃ちできないのか?
部屋探しのきっかけが個人の事情で発生し、外部からは観測できないためである。転勤の内示、同棲の決定、更新月、進学。どれも売り手側からは事前に分からない。
広告であればタイミングを買えるが、それは検索行動が発生した後の話になる。まだ探し始めていない層に対しては、こちらから接触を置いておくしかない。投稿を止めた期間に発生した検討は、まるごと取り逃がすことになる。
ここが、飲食や物販と決定的に違う点になる。思い立ってすぐ買う商材なら、その瞬間だけ広告を当てればいい。住まいは検討期間が長く、しかも開始時期が読めない。
今日の1アクション:直近で問い合わせが来たお客様に、いつから探し始めたかを聞く。想定より前から見ていることが多い。
接触を重ねると、何が変わるのか?
好意度が上がる。心理学ではこれを単純接触効果と呼ぶ。ロバート・ザイアンスが1968年の論文「Attitudinal effects of mere exposure」で体系的に示した知見で、繰り返し接した対象への好意度や印象が高まるという現象である。
この効果は特定の条件下だけのものではない。Bornstein(1989)は、提唱後の約30年間に行われた200件規模の研究をメタ分析している。人、物、言葉、記号など、対象を問わず観察されてきた。
不動産に置き換えると、こうなる。初めて見るアカウントは警戒される。何度か見かけるうちに「見覚えのある会社」になり、さらに続くと「知っている会社」になる。この状態を作っておくことが、相談先として選ばれる前提になる。
今日の1アクション:自社アカウントを、今週フォロワーが何回見た可能性があるかを数える。投稿本数がそのまま上限になる。
思い出されないと、何が起きるのか?
比較の土俵に乗らない。探し始めた瞬間に社名が浮かばなければ、その人はポータルサイトで一括比較を始める。そこでは条件と価格だけの勝負になり、自社の強みは効かなくなる。
マーケティングでは、想起される候補群を想起集合と呼ぶ。ここに入っているかどうかが、指名で相談が来るか、条件比較の1社として扱われるかを分ける。
物件投稿を続ける目的は、この集合に居続けることである。良い物件を持っていても、思い出されなければ提案する機会自体が発生しない。
今日の1アクション:直近の問い合わせのうち、指名で来たものと、条件検索から来たものを分けて数える。比率が現在地になる。
物件投稿は、テレビCMと何が違うのか?
接触を積む目的は同じだが、物件投稿は毎回中身が変わるため、繰り返しても飽きられない。
CMは同じ素材を反復する。回数を積むほど接触は増えるが、同時に飽きも生まれ、素材を作り替えるコストもかかる。物件投稿は違う。今日は中目黒の1LDK、明日は三軒茶屋の2DK。受け手には毎回別の情報として届きながら、送り手から見れば同じ会社との接触が積み上がっていく。
さらに、物件情報はすでに社内にある。CMのように企画から作る必要がなく、物件マスタを持っている会社なら素材は毎日更新されている。接触を積むための原資を、もともと持っていることになる。
今日の1アクション:自社の物件マスタに、いま何件の掲載可能な物件があるかを確認する。それが投稿できる本数の上限になる。
なぜ人力の運用では続かないのか?
止まるタイミングが、いちばん止めてはいけない時期と重なるためである。
投稿が止まる理由の大半は担当者の不在にある。いえらぶGROUPが2023年に実施した調査(エンドユーザー1,738名・不動産会社479名、有効回答2,217件)では、SNS運用をやめた理由の1位が「担当できる社員がいない」で28.8%、運用していない理由でも同じ項目が42.8%で1位を占めている。
問題は、担当者が最も忙しくなるのが繁忙期だという点にある。接客に追われて投稿が止まる時期は、部屋探しをしている人が最も多い時期でもある。接触を切らしてはいけない場面で、構造的に切れる。
この性質があるため、継続接触を目的に置くなら、投稿は人の余力に依存しない形にする必要がある。物件マスタから自動で配信する設計は、楽をするためではなく、止まらないための手段として選ばれる。
自動化の具体的な工程については「不動産会社のSNS投稿を自動化する方法」で扱っている。
今日の1アクション:繁忙期の投稿本数と、閑散期の投稿本数を比べる。差が大きいほど、仕組み側の問題が大きい。
よくある失敗3つ
- 1投稿あたりの反響で判断する:継続接触が目的なら、評価すべきは投稿単位の反響ではなく、接触が途切れていないかである。単発の数字で止める判断をすると、目的そのものを手放すことになる
- 反響が出ないから頻度を落とす:頻度を落とすと接触回数が減り、さらに反響が落ちる。悪循環の入り口になる
- 成約済みの物件を投稿し続ける:接触を優先するあまり、取引できない物件を出し続けると、おとり広告に該当するおそれがある。成約フラグと配信を必ず連動させる
3つ目は継続接触を重視するほど起きやすい。本数を維持することと、掲載してよい物件かの判断は、別々に管理する。
まとめ:今日から始める1ステップ
物件投稿は、1回で問い合わせを取る手段ではなく、探し始めた瞬間に思い出される状態を保つための接触である。単純接触効果が示すとおり、接触回数は好意度に効く。そして物件情報は毎回中身が変わるため、繰り返しても飽きられない。
最初の一歩は、直近3か月で投稿が落ち込んだ月を特定すること。そこが取り逃がした期間であり、仕組みで埋めるべき穴になる。
よくある質問
物件投稿は1回で問い合わせにつながらないと意味がないですか?
物件投稿の役割は1回で決めることではなく、探し始めた瞬間に思い出される状態を保つことです。投稿単位の反響ではなく、接触が途切れていないかで評価します。
単純接触効果とは何ですか?
繰り返し接した対象への好意度や印象が高まる心理効果です。ロバート・ザイアンスが1968年の論文で体系的に示し、その後200件規模の研究でメタ分析されています。
投稿の頻度はどれくらい必要ですか?
本記事では特定の本数を推奨していません。重要なのは本数の多さより、途切れないことです。繁忙期に落ち込む運用は、本数の目標より仕組みの見直しが先になります。
なぜ繁忙期に投稿が止まると問題なのですか?
担当者が接客に追われる時期は、部屋探しをしている人が最も多い時期でもあるためです。接触を切らしてはいけない場面で構造的に切れます。
接触を増やすために同じ物件を何度も投稿してよいですか?
成約済みの物件を投稿し続けると、おとり広告に該当するおそれがあります。成約フラグと配信を連動させ、掲載してよい物件かの判断は本数の維持とは別に管理してください。
・Zajonc, R. B. (1968). Attitudinal effects of mere exposure. Journal of Personality and Social Psychology Monograph Supplement, 9(2), 1-27. ・Bornstein, R. F. (1989). Exposure and affect: Overview and meta-analysis of research, 1968-1987. Psychological Bulletin, 106, 265-289. ・いえらぶGROUP「住まい探しにおけるポータルサイト・SNSの利用状況に関する調査」(2023年/エンドユーザー1,738名・不動産会社479名、有効回答2,217件) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000361.000008550.html ・不動産の表示に関する公正競争規約(不動産公正取引協議会連合会) https://www.rftc.jp/
