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不動産広告でやってはいけない表現|おとり広告と誇大広告

この記事の要点
- 関わるのは景表法・宅建業法・公正競争規約の3つ
- 成約済み物件の掲載継続はおとり広告のおそれ
- 徒歩分数は道路距離80mで1分、切り上げ
- 根拠のない最上級表現は使わない
- SNS投稿も広告表示として同じ規制がかかる
本記事は、不動産の集客・広告において避けるべき表示を、法令・規約の観点から整理した記事です。集客チャネル全体の考え方は別記事「不動産の反響を増やす集客チャネル比較」で扱っています。本記事の内容は一般的な整理であり、法的助言ではありません。
不動産広告にはどんな規制があるか?
景品表示法、宅地建物取引業法、不動産の表示に関する公正競争規約の3つが関わる。
法令・規約 | 主な内容 |
|---|---|
景品表示法 | 優良誤認・有利誤認となる表示の禁止 |
宅地建物取引業法 | 誇大広告等の禁止(第32条) |
不動産の表示に関する公正競争規約 | 徒歩所要時間の算出方法、必要表示事項、用語の定義など |
これらはポータルサイトの掲載だけでなく、自社サイト、SNS投稿、チラシなど、広告表示全般に適用される。媒体によって規制が変わるわけではない。
(公社)首都圏不動産公正取引協議会が2025年10月に公表した第14回インターネット賃貸広告一斉調査では、大手不動産情報サイトを対象に調査した結果、対象事業者の16.4%でおとり広告に該当する表示が確認されている。意図的でなくても、消し忘れや更新漏れが違反につながっている実態がある。
今日の1アクション:自社のSNS投稿に、成約済み物件が残っていないか確認する。
おとり広告とは何か?
実際には取引できない物件を、取引できるかのように広告することである。
典型的なのは次の3つである。
- 成約済み物件の掲載継続:契約が済んだ物件を消さずに残す
- 実在しない物件の掲載:反響獲得のみを目的とした架空の物件
- 取引の意思がない物件の掲載:問い合わせが来ても別物件を案内する前提での掲載
1つ目は、意図的でなくても発生する。掲載の取り下げが業務の手順に組み込まれていないと、繁忙期に抜け落ちる。成約処理と掲載取り下げをセットにしておく必要がある。
SNS投稿も同様である。投稿は時系列で残り続けるため、成約後に削除するか、成約済みである旨を明記する運用が必要になる。
徒歩分数はどう表示するか?
道路距離80メートルにつき1分として算出し、1分未満は切り上げる。
これは不動産の表示に関する公正競争規約で定められた基準である。直線距離ではなく道路距離で測る点、端数を切り上げる点が特に注意を要する。
信号待ちや踏切、坂道の所要時間は、この計算には含まれない。ただし、実態と大きく乖離する場合は、その旨を併記するのが望ましい。
SNSで「駅チカ」「駅近」とだけ書き、根拠となる分数や距離を示さない投稿も、表示として不十分と判断される可能性がある。
使ってはいけない表現は?
客観的な根拠がない最上級表現、および完全性・確実性を示す表現である。
区分 | 例 |
|---|---|
最上級表現 | 日本一、業界No.1、最高、最安、当社だけ |
完全性・確実性 | 完全、絶対、万全、100%、必ず |
優位性の断定 | 他社より安い、地域で一番 |
これらは、客観的な調査に基づく根拠があり、その調査の範囲・時期を明示できる場合に限り使用できる。根拠なく使うと、景品表示法上の優良誤認・有利誤認に該当するおそれがある。
「新築」という用語にも定義がある。建築後1年未満であって、居住の用に供されたことがないもの、とされている。この条件を満たさない物件に「新築」と表示することはできない。
SNSで特に注意すべき点は?
投稿が残り続けること、広告主体が分かりにくいことの2点である。
チラシやポータル掲載と違い、SNSの投稿は削除しない限り残り続ける。成約済み物件の投稿がそのまま残っていれば、おとり広告に該当するおそれがある。
また、宅地建物取引業者が広告を行う場合、商号や免許番号などの表示が求められる。SNSのプロフィールや固定投稿に記載しておくことで、広告主体を明確にできる。
加えて、他社の物件写真や紹介文を無断で使用することは、著作権上の問題が生じうる。写真は自社で撮影したものか、使用許諾を得たものを使う。
PR案件やインフルエンサー起用の場合は?
広告であることを、視聴者が認識できる形で明示する必要がある。
2023年10月から、事業者の広告であるにもかかわらず、それが分からない形で表示することは景品表示法の規制対象となっている。第三者に依頼して自社を紹介してもらう場合は、「PR」「広告」「提供」といった表示が必要である。
表示の位置にも注意が必要である。動画の最後や、キャプションの折りたたまれた部分に小さく入れるだけでは、認識できる形とは言えない可能性がある。
確認はどこで行うか?
所属する不動産公正取引協議会と、消費者庁・国土交通省の公表情報を一次情報として確認する。
規約や運用基準は改定される。解説記事やSNS上の情報では古くなっている可能性があるため、判断に迷う場合は必ず一次情報にあたる。所属協議会に問い合わせることもできる。
また、社内で判断が分かれる表現については、迷ったら使わないという方針にしておくほうが安全である。
今日の1アクション:所属する不動産公正取引協議会のサイトをブックマークする。
よくある失敗と注意点
- 成約済み物件の掲載・投稿を取り下げていない
- 徒歩分数を感覚で書き、規約上の算出方法に沿っていない
- 根拠のない最上級表現を使っている
- SNSのプロフィールに商号・免許番号の記載がない
- 他社の物件写真を無断で使用している
- PR案件で広告表示が認識しづらい位置にある
まとめ:今日から始める1ステップ
まず取り組むべきは、成約済み物件の掲載・投稿が残っていないかの確認である。おとり広告は意図せず発生しやすく、かつ指摘を受けたときの影響が大きい。成約処理の手順に「掲載の取り下げ」を組み込むところから始めるとよい。
なお、本記事の内容は一般的な整理であり、法的助言ではありません。法令・規約は改定されるため、具体的な判断は所属する不動産公正取引協議会、または専門家の確認によってください。
よくある質問
おとり広告とは何ですか?
実際には取引できない物件を取引できるかのように広告することである。成約済み物件の掲載継続が典型例。
徒歩分数はどう算出しますか?
道路距離80メートルにつき1分として算出し、1分未満は切り上げる。直線距離ではない点に注意する。
「新築」はいつまで使えますか?
建築後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものと定義されている。この条件を満たさない場合は使えない。
SNS投稿で特に注意すべき点は?
投稿が削除しない限り残り続けること、広告主体が分かりにくいことの2点。商号や免許番号をプロフィール等に記載する。
景品表示法(消費者庁)/宅地建物取引業法第32条/不動産の表示に関する公正競争規約(全国不動産公正取引協議会連合会)
