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不動産のSNS動画でやってはいけない表現。景表法・宅建業法・規約の実務

この記事の要点
- 媒体が変わっても適用される規制は同じ
- 最上級表現は根拠と範囲の明示がなければ使えない
- 徒歩分数は道路距離80mにつき1分で端数切り上げ
- 新築は建築後1年未満かつ未入居のみ
- 成約後の投稿残存はおとり広告に該当するおそれ
不動産のSNS動画に広告規制は適用されるか?
適用されます。媒体がチラシからSNS動画に変わっても、宅地建物取引業法、景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約は同じように適用されます。
「個人アカウントだから」「動画だから」という理由で対象外になることはありません。宅建業者が取引を目的として物件を紹介すれば、広告として扱われます。
本記事は、賃貸・売買いずれの実務者も対象です。判断に迷う表示は、宅地建物取引士や所属する不動産公正取引協議会に確認してください。
使ってはいけない表現はどれか?
客観的な裏付けと出典がない限り、最上級表現と価格の煽り表現は使えません。
分類 | 使えない表現の例 | 理由 |
|---|---|---|
最上級・完全性 | 日本一/業界No.1/当社だけ/万全 | 客観的な根拠と範囲の明示がなければ優良誤認にあたる |
価格・お得感 | 格安/激安/掘り出し物/土地値 | 比較対象と根拠を示せなければ有利誤認にあたる |
誤認を招く断定 | 値上がり確実/空室にならない/利回り保証 | 投資勧誘に該当しうる。他法令にも触れるおそれがある |
根拠がある場合は、調査時点と範囲を併記すれば使える余地があります。「2025年◯月時点、自社調べ、◯◯市内の賃貸仲介店舗数ベース」のように、誰が・いつ・何を対象に調べたかを書きます。
今日の1アクション:直近10投稿のテロップとキャプションを読み、上の表の語が入っていないか確認する。
動画特有の落とし穴はどこか?
尺の短さで必要な表示が落ちること、加工の不告知、成約後の投稿の残存の3つです。
- 尺で条件が落ちる:賃料・面積・所在などが動画内に入らない。末尾のテロップかキャプションで確認できる状態にする
- 加工の不告知:家具消しや色調整をしたまま、加工した旨を書かない。実際の状態を誤認させるおそれがある
- 成約後の残存:成約した物件の動画が残り続ける。おとり広告に該当するおそれがある
3番目は自動投稿を使っている店舗で特に起きます。ループ配信を設定したまま成約すると、取引できない物件が投稿され続けます。成約時に投稿を止める手順を、配信設定と同時に決めてください。
今日の1アクション:現在予約されている投稿の一覧を出し、成約済み物件が含まれていないか確認する。
徒歩分数はどう書くべきか?
道路距離80メートルにつき1分として算出し、1分未満の端数は切り上げます。
直線距離で計算すると実際より短くなり、誤認を招きます。地図アプリの直線距離をそのまま使わないでください。信号や踏切の待ち時間は所要時間に含まれないため、実感と差が出ることがあります。
「駅近」「駅チカ」のような曖昧な表現のみで済ませず、分数か距離を併記します。
「新築」はいつまで使えるのか?
建築後1年未満で、かつ未入居のものだけです。
築1年以上経過したもの、入居履歴があるものは「新築」と表示できません。「新築同様」「新築級」も誤認を招くため避けてください。
畳数を表示する場合は、1畳を1.62平方メートル以上として換算します。動画のテロップで帖数を出すときも同じ基準です。
ステマ規制はSNS動画にどう関わるか?
2023年10月から、広告であるにもかかわらず広告と分かりにくい表示は、景品表示法の不当表示に指定されています。
実務で関わる場面は3つあります。
- インフルエンサーに物件紹介を依頼する場合、広告である旨を明示させる
- 自社スタッフが個人アカウントで自社物件を紹介する場合、所属を明示する
- 入居者の声を紹介する場合、対価を渡しているかどうかで扱いが変わる
依頼した投稿に表示がなければ、依頼した側の責任が問われる場合があります。依頼時の取り決めに明示のルールを含めてください。
よくある違反3つ
SNS動画で実際に起きやすいものです。
- 成約済み物件の投稿を残す。おとり広告に該当するおそれがある
- 根拠のない最上級表現を使う。「地域No.1の物件数」に出典がない
- 加工した映像を加工と書かずに出す。実際の状態を誤認させるおそれがある
違反した場合、宅地建物取引業法では業務停止などの行政処分、公正競争規約では違約金や業界内での公表の対象になり得ます。
違反した場合どうなるのか?
宅地建物取引業法では指示処分や業務停止などの行政処分、公正競争規約では違約金と業界内での公表の対象になり得ます。
公正競争規約に基づく違約金は、違反の内容に応じて金額が定められています。行政処分を受けた場合、免許権者による公表の対象となり、取引先や採用にも影響します。
金銭的な負担より影響が大きいのは、記録が残る点です。処分歴は消えません。
社内のチェック体制はどうつくるべきか?
公開前のチェックリストを5項目に絞り、確認担当を1人だけ決めます。
- 最上級表現・価格の煽り表現が入っていないか
- 賃料・面積・所在が、動画かキャプションで確認できるか
- 徒歩分数が道路距離で算出されているか
- 加工した映像に、加工した旨が書かれているか
- この物件が現在取引できる状態か
項目を増やすと運用が止まります。5項目で漏れる論点は、四半期ごとの見直しで拾ってください。
確認担当を1人にする理由は、全員で確認する体制が誰も確認しない体制になりやすいためです。撮影者と確認者は分けてください。自分が撮った動画の表現は、自分では見つけにくくなります。
今日の1アクション:上の5項目をチェックシートにし、公開前の確認担当を1人決める。
投稿を消せば問題は解決するのか?
削除は必要ですが、それだけでは足りません。同じ表現が他の投稿やテンプレートに残っていないかを確認してください。
SNS投稿は同じ文言を使い回すため、1本で見つかった表現は他の投稿にも入っている可能性があります。表現がテンプレートに組み込まれている場合、削除しても次の投稿で再発します。
対応の順序は3段階です。
- 該当投稿を削除または修正する
- 同じ表現が使われている他の投稿を検索し、まとめて対応する
- テンプレートと予約投稿の設定から、その表現を削除する
3番目を飛ばすと再発します。予約配信を使っている場合は、配信予定の内容も確認してください。
まとめ:今日から始める1ステップ
媒体がSNS動画に変わっても、適用される規制は変わりません。最上級表現、価格の煽り、将来の断定を避け、成約後に投稿を止める運用を先に決めます。
今日やることは1つです。予約投稿の一覧を出し、成約済み物件が含まれていないか確認する。
条文や規約は改正されます。本記事の内容は一次スクリーニングとして使い、実際の運用は最新の条文と専門家の確認を経てください。
よくある質問
個人アカウントでの物件紹介も規制の対象ですか?
宅建業者が取引を目的として物件を紹介すれば、広告として扱われます。個人アカウントであることは対象外になる理由になりません。
動画の尺が短く条件が入りきりません。省略してよいですか?
省略はできません。末尾のテロップかキャプションで確認できる状態にしてください。
家具消し加工をした動画は使えますか?
加工した事実を明示しないと、実際の状態を誤認させるおそれがあります。加工した旨を明記してください。
徒歩分数はどう計算しますか?
道路距離80メートルにつき1分として算出し、1分未満の端数は切り上げます。直線距離では計算しません。
スタッフが個人アカウントで自社物件を紹介する場合はどうすべきですか?
所属を明示してください。広告であることが分かりにくい表示は、2023年10月から景品表示法の不当表示に指定されています。
宅地建物取引業法 第32条(誇大広告等の禁止)/不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)第5条/不動産の表示に関する公正競争規約および同施行規則(不動産公正取引協議会連合会)/一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(2023年10月施行の指定告示、消費者庁)。条文・規約・運用基準は改正されます。実際の判断は最新の条文を確認し、宅地建物取引士または所属する不動産公正取引協議会にご相談ください。
