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不動産会社がAIに入力してはいけない情報|個人情報と秘密保持

この記事の要点
- 顧客の個人情報は入力しない。条件だけ匿名化する
- 未公開の物件情報と預かった秘密情報も入力しない
- サービスのデータ利用設定を事前に確認する
- 使ってよいサービスを会社が指定する
- 入力可否の一覧を1枚にまとめて共有する
本記事は、賃貸・売買仲介の店舗責任者・本部の管理担当者向けです。AI活用全体の流れは「不動産業務でAIを使う方法」で解説しています。本記事はそのうち、情報の取り扱いを扱います。
本記事は一般的な情報の整理であり、個別の事案の適法性を判断するものではありません。判断に迷う場合は、専門家に確認してください。
なぜ入力する情報に注意が必要なのか?
入力したデータの扱いが利用するサービスによって異なるためです。学習に利用される設定になっている場合、情報が事業者の管理外に置かれることになります。
不動産業は、顧客の個人情報と、売主・貸主から預かった秘密情報の両方を扱う業種です。宅地建物取引業者には、宅地建物取引業法上の秘密を守る義務があります。加えて、顧客情報については個人情報の保護に関する法律の対象となります。
したがって、AIの利用にあたっては入力してよい情報の範囲を先に決める必要があります。
今日の1アクション:社内で誰がどのAIサービスを使っているか確認してください。
入力してはいけない情報とは?
次の5つに分類できます。
① 顧客の個人情報
- 氏名、電話番号、メールアドレス、住所
- 勤務先、年収、家族構成
- SNSアカウント名
② 申込・審査に関する書類
入居申込書、審査書類、保証会社への提出資料。第三者の個人情報も含まれます。
③ 契約に関する書類
賃貸借契約書、売買契約書、媒介契約書、重要事項説明書。当事者の個人情報と契約条件が含まれます。
④ 未公開・非公開の物件情報
公開前の物件、売主の意向で非公開としている物件の情報。
⑤ 預かった秘密情報
売却理由、価格の下限、貸主の事情など、業務上知り得た情報。宅地建物取引業法上の秘密を守る義務の対象となり得ます。
今日の1アクション:上の5分類を1枚にまとめてください。
入力してよい情報は何か?
公開済みの情報と、個人が特定できない形に処理した情報です。
情報 | 可否 | 備考 |
|---|---|---|
公開済みの広告情報 | 可 | すでに外部に出ている |
公開されているエリア情報 | 可 | 施設名、公的統計など |
匿名化した顧客条件 | 可 | 20代・単身・予算8万円台 など |
自社で作成した公開資料 | 可 | ブログ記事、公開マニュアルなど |
社内資料(顧客情報を含まない) | 可 | 業務手順、研修資料など |
匿名化で見落としやすい点
氏名を伏せても、情報の組み合わせで個人が特定できる場合があります。 勤務先・年収・希望エリア・入居時期を組み合わせると、特定につながることがあります。
渡すのは属性と条件だけにしてください。追客メールの作成で必要なのは「20代・単身・予算8万円台・◯◯線沿線」程度の情報で、それ以上は不要です。
今日の1アクション:AIに渡している顧客条件に、特定につながる情報が含まれていないか確認してください。
社内ルールには何を定めるべきか?
次の5項目です。
- 使ってよいサービスの指定:会社が許可したサービスのみ使う。個人が任意に選ぶ状態にしない
- 入力可否の一覧:前述の分類を社内基準として文書化する
- データ利用設定の確認:入力内容が学習に使われない設定にできるか、導入時に確認する
- 違反時の報告先:誤って入力した場合に、誰に報告するかを決めておく
- 年1回の見直し:サービスの仕様も法令も変わるため、定期的に更新する
特に1番目が重要です。ルールがないまま各自が使い始めると、どの情報がどのサービスに入力されたか把握できなくなります。後から回収することもできません。
ツール選定の観点は別記事で解説しています。
今日の1アクション:会社として使ってよいAIサービスを1つ決めてください。
誤って入力してしまった場合は?
まず社内で報告する体制にしてください。個人で抱え込むと対応が遅れます。
確認すべきこと
- 何を入力したか(情報の種類と範囲)
- どのサービスに入力したか
- そのサービスのデータ利用設定はどうなっていたか
- 入力履歴を削除できるか
サービスによっては会話履歴の削除機能があります。ただし削除しても、すでに学習に使われた分が取り消せるとは限りません。
顧客の個人情報が含まれる場合の対応は、事案により判断が異なります。個人情報の保護に関する法律に基づく対応が必要になる可能性もあるため、専門家に確認してください。
今日の1アクション:誤入力時の報告先を決めてください。
よくある失敗と注意点
AI利用における情報の取り扱いで起きやすい失敗は、次の5つです。
- ルールを決めずに使い始める:どの情報がどこに入力されたか把握できません
- 氏名だけ伏せて安心する:組み合わせで特定できる場合があります
- データ利用設定を確認しない:学習に使われる設定のまま使うことになります
- 個人が任意のサービスを使う:会社の管理外に情報が出ます
- 誤入力を報告しない:対応が遅れます
AIの活用と情報管理は同時に設計してください。使い始めてからルールを作ると、それまでの入力を把握できません。
まとめ:今日から始める1ステップ
不動産会社のAI利用における情報の取り扱いは、次の基準で整理できます。
- 顧客の個人情報、申込・審査書類、契約書類は入力しない
- 未公開の物件情報と預かった秘密情報も入力しない
- 顧客の条件は属性のみに絞って渡す
- 会社として使ってよいサービスを指定する
- 入力可否の一覧を文書化し、年1回見直す
- 誤入力時の報告先を決めておく
今日の1ステップ:入力してはいけない情報の一覧を1枚にまとめ、社内で共有してください。使い始めた後に作るより、今作るほうが確実です。
個別の事案がどう扱われるかは判断が分かれます。社内で判断がつかない場合は、専門家に確認してください。
よくある質問
無料のAIサービスを業務で使ってもいいですか?
利用規約とデータの取り扱いを確認してから判断してください。入力内容が学習に利用される設定になっているサービスもあります。会社として使ってよいサービスを指定する運用を推奨します。
顧客の名前を伏せれば入力してよいですか?
氏名を伏せても、勤務先・年収・住所などの組み合わせで個人が特定できる場合があります。属性と条件だけを渡し、特定につながる情報は含めないでください。
売主から預かった資料は入力できますか?
できません。宅地建物取引業者には秘密を守る義務があります。売却理由や価格の下限など、預かった情報を外部のサービスに入力することは避けてください。
社員が個人的にAIを使っている場合は?
業務情報を入力していないか確認してください。会社の管理外のサービスに業務情報が入力されると、どの情報がどこにあるか把握できなくなります。使ってよいサービスを明示してください。
違反した場合どうなりますか?
個人情報の取り扱いについては個人情報の保護に関する法律、秘密情報については宅地建物取引業法上の守秘義務が関わります。具体的な影響は事案により異なるため、判断に迷う場合は専門家に確認してください。
個人情報の保護に関する法律/宅地建物取引業法 第45条(秘密を守る義務)/宅地建物取引業法 第35条(重要事項の説明等)
