
不動産のInstagram投稿でやってはいけない表現|景表法・おとり広告
この記事の要点
- SNSでも宅建業法・景表法・表示規約が適用される
- 完全・絶対・No.1などの特定用語は原則使用できない
- 徒歩分数は道路距離80mで1分、端数は切り上げ
- 新築は建築後1年未満かつ未入居のみ
- 成約済み物件の掲載放置はおとり広告のリスク
不動産会社のInstagram投稿に適用される法規制と、使ってはいけない表現を解説します。SNSでも宅建業法・景表法・表示規約が適用されます。特定用語、徒歩分数、新築の定義、おとり広告の判断基準をまとめました。
本記事は、賃貸・売買仲介の店舗でInstagramを運用している担当者・店舗責任者向けです。Instagram運用全体の流れは「不動産会社のInstagram運用完全ガイド」で解説しています。本記事はそのうち、投稿に適用される法規制を扱います。
本記事は一般的な情報の整理であり、個別の表現の適法性を判断するものではありません。判断に迷う場合は、宅地建物取引士や所属する公正取引協議会に確認してください。
SNSの投稿も不動産広告の規制対象になるのか?
対象になります。宅地建物取引業法、景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約は、媒体を限定していません。
Instagramの投稿、ストーリーズ、リール、プロフィール文、DMでの物件紹介のいずれも、不動産の広告表示にあたります。紙のチラシやポータルサイトの掲載と同じ基準が適用されます。
SNSで事故が起きやすいのは、規制が緩いからではなく、次の特性によります。
- 投稿が残り続ける:チラシと異なり、過去の投稿が閲覧可能な状態で蓄積される
- 担当者が個人の感覚で作る:広告物としてのチェック工程を経ないことがある
- 文字数の制約で根拠を書けない:出典や条件の併記が省略されやすい
- 速報性が優先される:確認より速さが優先される場面がある
今日の1アクション:投稿前のチェック工程が社内にあるか確認してください。
使ってはいけない用語は何か?
客観的な根拠がない限り、最上級を示す用語と、著しい安さを示す用語は使用できません。不動産の表示に関する公正競争規約では、特定の用語について使用基準が定められています。
原則として使用できない用語
分類 | 用語の例 |
|---|---|
完全性・最上級 | 完全/完璧/絶対/万全/日本一/No.1/当社だけ/唯一/最高/最高級/最適/抜群/一流/特選/厳選 |
安さの強調 | 格安/激安/破格/掘り出し物/買得/土地値/最安値/半値 |
断定的な将来予測 | 必ず値上がりする/損はしない/確実に儲かる |
これらの用語は、客観的な調査結果があり、調査の範囲・時点・出典を併記できる場合に限り使用できる余地があります。ただしInstagramのキャプションやリールのテロップで出典を併記するのは現実的でないため、使用しない方針が安全です。
3行目の断定的な将来予測は、特に注意が必要です。投資用物件の紹介でこの種の表現を用いると、他の法令に抵触する可能性もあります。
今日の1アクション:過去3か月の投稿を検索し、上の用語が含まれていないか確認してください。
数値の表示にはどんなルールがあるのか?
徒歩分数・面積・築年数には、不動産の表示に関する公正競争規約で算出方法が定められています。感覚での表記は認められません。
主な数値ルール
- 徒歩所要時間:道路距離80メートルにつき1分として算出し、1分未満の端数は切り上げます。直線距離での計算は認められません。信号待ちや坂道の有無は考慮されない基準です
- 「新築」の表示:建築後1年未満であり、かつ未入居のものに限られます。いずれかを満たさない場合、「新築」と表示することはできません
- 畳数の換算:1畳あたり1.62平方メートル以上として算出します
- 面積:壁芯か内法かによって数値が変わるため、根拠となる資料の数値を用います
「駅近」「駅チカ」といった曖昧な表現も、誤認を招くおそれがあります。徒歩分数または道路距離を併記してください。
リールのテロップやストーリーズで数値を出す場合も、同じ基準が適用されます。動画は情報量が限られるため、正確性の確認が省略されやすい点に注意してください。
今日の1アクション:現在掲載中の物件の徒歩分数が、道路距離80メートル基準で算出されているか確認してください。
おとり広告に該当するのはどんな場合か?
おとり広告とは、実際には取引できない物件、または取引する意思のない物件を広告に用いることを指します。次の3類型が該当します。
- 実際には存在しない物件の表示
- 存在するが取引できない物件の表示(成約済み、売主に売却の意思がないなど)
- 存在するが取引する意思のない物件の表示(客寄せ目的で掲載し、実際には別物件を勧める)
SNS運用で最も起きやすいのは2番目です。投稿した時点では募集中でも、成約後に投稿を削除しなければ、取引できない物件を掲載し続けることになります。
SNS特有の注意点
- 過去のフィード投稿:削除しない限り閲覧可能な状態が続きます
- ハイライト:ストーリーズは24時間で消えますが、ハイライトに追加したものは残ります
- 予約投稿・自動投稿:作成時点で募集中でも、公開日には成約している可能性があります
- 自社サイトへの連携:SNS側で削除しても、連携先に残る場合があります
予約投稿や投稿の自動化を行う場合は、公開前に成約状況を確認する工程を必ず設けてください。投稿の自動化については別記事で解説しています。
今日の1アクション:フィード投稿とハイライトから、成約済み物件を洗い出してください。
誇大広告等の禁止では、何が問題になるのか?
宅地建物取引業法第32条は、著しく事実に相違する表示、または実際のものより著しく優良・有利であると誤認させる表示を禁止しています。対象となる事項は条文で定められています。
対象となる主な事項
事項 | SNSで起きやすい例 |
|---|---|
所在・規模・形質 | 加工により実際より広く見せる、欠陥箇所を消す |
利用の制限 | 用途地域や建築制限に触れずに活用例を示す |
環境 | 眺望・日照を実際より良く見せる |
交通その他の利便 | 未確定の新駅・道路計画を確定的に示す |
代金・賃料 | 諸費用を除いた金額のみを強調する |
写真や動画の加工は、この規定に直接関わります。明るさや色味の調整は許容される範囲ですが、広角の歪みを強調して部屋を広く見せる、汚れや欠陥を消すといった加工は、実際のものより優良であると誤認させるおそれがあります。撮影と加工の実務は別記事で解説しています。
将来の環境や利便については、公式に発表されている計画であっても、確定的な表現は避けてください。
今日の1アクション:加工の可否について、社内の基準が文書化されているか確認してください。
広告であることを隠す表示は問題になるか?
問題になります。事業者が関与しているにもかかわらず、第三者の自主的な投稿であるかのように見せる表示は、景品表示法の規制対象です。
令和5年10月から、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示が、景品表示法上の不当表示として指定されています。
該当しうる例
- インフルエンサーに依頼した投稿で、依頼関係を明示していない
- 従業員が個人アカウントを装って自社物件を推奨する
- 掲載許諾を得ていない、または実在しない「お客様の声」を掲載する
依頼して投稿してもらう場合は、「PR」「広告」「提供」等を、消費者が認識できる位置と大きさで明示してください。投稿本文の末尾に多数のハッシュタグと並べて記載する形は、判別が困難と評価される可能性があります。
今日の1アクション:第三者に依頼した投稿がある場合、広告表示が明示されているか確認してください。
よくある失敗と注意点
Instagram運用で繰り返し起きる法規制上の失敗は、次の5つです。
- 成約済み物件を削除しない:おとり広告に該当するおそれがあります。成約時の対応担当を決めます
- ハイライトを見落とす:ストーリーズは消えてもハイライトは残ります。定期的に棚卸しします
- 最上級表現を使う:出典を併記できないSNSでは使用しない方針が安全です
- 徒歩分数を感覚で書く:道路距離80メートルにつき1分で算出します
- 加工の基準が担当者任せ:可否の一覧を文書化し、社内で共有します
違反した場合、宅地建物取引業法に基づく監督処分、景品表示法に基づく措置命令や課徴金納付命令の対象となる可能性があります。不動産公正取引協議会に加盟している場合は、規約に基づく措置の対象にもなります。
まとめ:今日から始める1ステップ
不動産のInstagram投稿における法規制上の要点は、次のとおりです。
- SNSでも宅建業法・景表法・表示規約が適用される
- 最上級表現と著しい安さを示す用語は原則使用しない
- 徒歩分数は道路距離80メートルにつき1分、端数は切り上げ
- 「新築」は建築後1年未満かつ未入居のみ
- 成約済み物件はフィード・ハイライトの両方から削除する
- 加工は明るさ・色味の調整まで
- 依頼した投稿には広告表示を明示する
今日の1ステップ:ハイライトを開き、成約済み物件が残っていないか確認してください。SNS運用で最も見落とされやすく、かつリスクが高い箇所です。
個別の表現がどこまで許されるかは事案により判断が分かれます。社内で判断がつかない場合は、宅地建物取引士や所属する公正取引協議会に確認してください。
よくある質問
- SNSの投稿も不動産広告の規制対象になりますか?
- 対象になります。宅地建物取引業法、景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約は媒体を限定していません。Instagramの投稿、ストーリーズ、リール、プロフィール文のいずれも規制の対象です。
- 「駅近」という表現は使えますか?
- 距離や時間を伴わない曖昧な表現は、誤認を招くおそれがあります。徒歩分数または道路距離を併記してください。徒歩分数は道路距離80メートルにつき1分として算出し、1分未満の端数は切り上げます。
- 成約済みの投稿は削除すべきですか?
- 削除するか、成約済みである旨を明記してください。取引できない物件を掲載し続けると、おとり広告に該当するおそれがあります。ストーリーズは24時間で消えますが、ハイライトに追加した場合は残るため注意が必要です。
- インフルエンサーに紹介してもらう場合の注意点は?
- 広告であることが分かる表示が必要です。事業者が関与しているにもかかわらず第三者の自主的な投稿であるかのように見せる表示は、景品表示法の規制対象となります。「PR」「広告」等を明示してください。
- 違反した場合どうなりますか?
- 宅地建物取引業法に基づく監督処分、景品表示法に基づく措置命令や課徴金納付命令の対象となる可能性があります。不動産公正取引協議会に加盟している場合は、規約に基づく措置の対象にもなります。
宅地建物取引業法 第32条(誇大広告等の禁止)/不当景品類及び不当表示防止法/不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(不動産公正取引協議会連合会)/一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(令和5年内閣府告示第19号)