相談する

記事

AIで不動産の事務作業を減らす|議事録・資料作成・情報整理

この記事の要点

  • 社内で完結する業務から始めるのが安全
  • 議事録の要約は効果が分かりやすい
  • 契約書や重要事項説明書はAIに入力しない
  • 要約だけを読んで判断しない。原本も確認する
  • 削減できるのは書く時間であって判断の時間ではない

本記事は、賃貸・売買仲介の店舗で事務作業の負荷に課題を感じている方向けです。AI活用全体の流れは「不動産業務でAIを使う方法」で解説しています。本記事はそのうち、社内の事務作業を扱います。

なぜ事務作業から始めるべきなのか?

間違いが社外に出ないためです。 AIの出力には誤りが混入します。社内で完結する業務であれば、誤りに気づいても訂正が効きます。

顧客に接する業務や公開する文章から始めると、確認工程が抜けたときの影響が大きくなります。まず社内業務で出力の癖を把握し、確認のコツを掴んでから外向きの業務に広げる順序が安全です。

導入の順序

  1. 議事録の要約:社内のみ。効果が分かりやすい
  2. 社内資料の下書き:社内のみ。構成と整形を任せる
  3. 物件紹介文の下書き:公開前の確認が必要
  4. 顧客への返信文:送信前の確認が必要

今日の1アクション:社内の事務作業で、文章を書く時間が長いものを1つ挙げてください。

議事録の要約にはどう使うのか?

録音の文字起こしや手書きメモを渡し、要点の抽出と整形を任せます。効果が分かりやすく、最初に試すのに適しています。

指示に含める項目

  • 出力形式:決定事項・宿題・次回までのタスクに分ける
  • 粒度:A4で1枚以内、箇条書き
  • 担当者の明示:誰が何をいつまでにやるか
  • 制約:発言になかった内容を補わない

4番目が重要です。AIは文脈を補って自然な文章にしようとするため、実際には言及されていない内容が入ることがあります。

確認の仕方

要約だけを読んで判断しないでください。 数値や固有名詞の誤りが混入することがあります。金額、期日、物件名などの重要な項目は、原本で確認する運用にしてください。

今日の1アクション:次の会議で、議事録の要約をAIで作ってみてください。

社内資料の作成にはどう使うのか?

構成の下書きと整形に使います。数値やデータは自社の資料から人が転記し、AIには文章化を任せる形にします。

使える場面

資料

AIの役割

月次の営業報告

数値を渡して文章化・整形

研修資料

構成案の作成、複数案の提示

業務マニュアル

手順の整理、文章の統一

既存資料の更新

差分の反映、表現の統一

特に業務マニュアルは効果が出やすい領域です。属人化していた手順を言語化する際、AIに構成を提案させると抜け漏れに気づきやすくなります。運用の属人化については別記事で解説しています。

今日の1アクション:文書化されていない業務手順を1つ挙げ、AIで構成案を作ってみてください。

入力してはいけない書類は何か?

次の書類は入力しないでください。個人情報や秘密情報が含まれます。

  • 契約書:賃貸借契約書、売買契約書、媒介契約書
  • 重要事項説明書:物件と当事者の詳細が含まれる
  • 顧客の申込書:氏名、勤務先、収入などの個人情報
  • 売主・貸主から預かった資料:秘密保持の対象
  • 審査に関する書類:第三者の個人情報

これらの内容の確認は、宅地建物取引士を含む社内の担当者が行ってください。重要事項の説明は宅地建物取引業法に基づき法定の方法で行う必要があり、AIが代替できるものではありません。

判断に迷う書類がある場合は、社内で入力してよいかを事前に確認する運用にしてください。

今日の1アクション:入力してはいけない書類の一覧を作り、社内で共有してください。

どのくらい時間が減るのか?

減るのは文章を書く時間と整形の時間です。内容を確認する時間、判断する時間は減りません。

効果の測り方

  1. 導入前に、対象業務にかかる時間を記録する
  2. 1か月使ってから、同じ業務の時間を計測する
  3. 差分を確認する

記録がないと効果を判断できません。「なんとなく楽になった」で終わると、続けるべきかの判断もできなくなります。

注意点として、確認作業に時間がかかりすぎて総時間が減らない場合があります。その場合は、渡す情報の整理が不十分か、指示の制約が足りていない可能性があります。

今日の1アクション:対象業務の現在の所要時間を記録してください。

よくある失敗と注意点

事務作業でAIを使う際の失敗は、次の5つです。

  1. 契約書や申込書を入力する:個人情報・秘密情報の取り扱い上の問題が生じます
  2. 要約だけ読んで判断する:数値や固有名詞の誤りを見落とします
  3. 発言にない内容が補われる:制約に「補わない」を明示します
  4. 効果を測らない:続けるべきか判断できません
  5. 各自が任意のサービスを使う:どの情報がどこに入力されたか把握できません

社内業務であっても、扱う情報の範囲は明確にしてください。社内資料の中にも、顧客情報が含まれるものがあります。

まとめ:今日から始める1ステップ

事務作業でのAI活用は、次の基準で進められます。

  • 社内で完結する業務から始める
  • 議事録の要約が最も試しやすい
  • 数値は人が転記し、文章化だけ任せる
  • 契約書・重要事項説明書・申込書は入力しない
  • 要約だけで判断せず、重要な数値は原本を確認する
  • 導入前の作業時間を記録しておく

今日の1ステップ:AIに入力してはいけない書類の一覧を作ってください。使い始める前に決めておくべき、最初の1枚です。

よくある質問

契約書をAIに読ませてもいいですか?

入力しないでください。契約書や重要事項説明書には、顧客・売主・貸主の個人情報や秘密情報が含まれます。内容の確認は、宅地建物取引士を含む社内の担当者が行ってください。

議事録の要約はどのくらい正確ですか?

要点の抽出は概ね機能しますが、数値や固有名詞の誤りが混入することがあります。要約だけを読んで判断せず、重要な数値は原本で確認してください。

社内資料の作成にはどう使えますか?

構成の下書き、既存資料の要約、複数案の作成に使えます。数値やデータは自社の資料から人が転記し、AIには文章化と整形を任せる形にしてください。

事務作業でどのくらい時間が減りますか?

削減できるのは文章を書く時間と整形の時間です。内容を確認する時間、判断する時間は減りません。効果を測るには導入前の作業時間を記録しておく必要があります。

この記事を書いた人

四辻 俊昭

Rox株式会社 代表取締役 CEO / CMO

サイバーエージェントグループでWebディレクター・アートディレクターを経験後、2015年に3Minute(後にGREEグループ入り)の創業フェーズへ参画。lute株式会社では広告代理店事業の立ち上げから執行役員 兼 事業部長を務め、SNS・Web動画を中心としたデジタルコミュニケーション施策の企画・設計に従事。動画SaaS企業での新規事業を経て、2021年10月にRox株式会社を設立。

タグ:AI活用 / 事務作業 / 業務効率化 / 社内業務 / 資料作成

出典・参考
宅地建物取引業法 第35条(重要事項の説明等)/宅地建物取引業法 第37条(書面の交付)/個人情報の保護に関する法律