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物件情報の自動投稿とおとり広告|自動化前に決めるルール

この記事の要点
- おとり広告は存在しない・取引できない・取引意思がない物件の3類型
- 自動化の度合いが上がるほど確認工程の重要性が増す
- 成約時に投稿を止める担当を必ず決める
- ハイライトとサイト連携先は見落とされやすい
- 判断に迷う場合は宅建士や公正取引協議会に確認する
本記事は、賃貸・売買仲介の店舗でSNSの自動投稿を検討している、または運用している担当者・店舗責任者向けです。自動化全体の流れは「不動産会社のSNS投稿を自動化する方法」で解説しています。本記事はそのうち、法規制上のリスクを扱います。
本記事は一般的な情報の整理であり、個別の事案の適法性を判断するものではありません。判断に迷う場合は、宅地建物取引士や所属する公正取引協議会に確認してください。
おとり広告に該当するのはどんな場合か?
おとり広告とは、実際には取引できない物件、または取引する意思のない物件を広告に用いることを指します。次の3類型が該当します。
- 実際には存在しない物件の表示
- 存在するが取引できない物件の表示(成約済み、売主に売却の意思がないなど)
- 存在するが取引する意思のない物件の表示(客寄せ目的で掲載し、実際には別物件を勧める)
SNSの自動投稿で最も起きやすいのは2番目です。投稿した時点では募集中でも、成約後に投稿を削除しなければ、取引できない物件を掲載し続けることになります。
これは意図の有無にかかわらず問題となり得ます。「削除を忘れていた」という説明で免れるものではありません。
今日の1アクション:公開中の投稿から成約済み物件を洗い出してください。
自動化するとなぜリスクが上がるのか?
公開までに人が関与する機会が減るためです。 手作業の運用では、投稿前に「この物件はまだ募集中か」を自然に確認します。自動化するとこの確認が飛びます。
自動化の度合いとリスク
運用 | 人の関与 | 必要な確認 |
|---|---|---|
手作業で都度投稿 | 投稿の瞬間に確認できる | 投稿時 |
予約投稿 | 作成時のみ | 作成時+公開前 |
自動投稿 | ルール設定時のみ | 設定時+定期確認 |
サイト連携あり | 同上 | 上記+サイト側の確認 |
自動化の度合いが上がるほど、確認の工程を明示的に設計する必要があります。自動化と確認の厳密さは、比例させてください。
今日の1アクション:自社の運用が上の表のどれに当たるか確認してください。
SNSで見落とされやすい箇所はどこか?
次の4箇所が、実際に成約物件が残りやすい場所です。
① 過去のフィード投稿
削除しない限り閲覧可能な状態が続きます。プロフィールから遡れば誰でも見られるため、「古い投稿だから見られない」という前提は成り立ちません。
② ハイライト
最も見落とされる箇所です。 ストーリーズは24時間で消えますが、ハイライトに追加したものは残り続けます。空室速報をハイライトにまとめている場合、特に注意が必要です。
③ 予約投稿
作成時点では募集中でも、公開日には成約している可能性があります。公開前に募集状況を確認する工程が必要です。
④ 自社サイトへの連携先
SNSの投稿をサイトに自動反映している場合、SNS側で削除してもサイト側に残る仕様のことがあります。導入前に削除が同期されるか確認し、されない場合は両方で削除する運用にしてください。サイト連携の詳細は別記事で解説しています。
今日の1アクション:ハイライトを開き、成約済み物件が残っていないか確認してください。
自動化の前に決めるべきルールとは?
次の3つを、ツール導入より先に決めてください。
① 公開前に募集状況を確認する担当
予約投稿・自動投稿の公開前に、対象物件が募集中かを確認する人を固定します。「気づいた人が確認する」という運用では、確認されない日が発生します。
② 成約時に投稿を止める担当
成約の情報が入った時点で、予約投稿の取り消しと公開済み投稿の対応を行う人を決めます。営業担当と投稿担当が異なる場合、成約情報が投稿担当に届く経路も設計してください。
③ 過去投稿を削除するか明記するかの基準
成約済み物件の投稿を、削除するのか、成約済みである旨を追記して残すのか、方針を統一します。担当者ごとに判断が分かれると、対応漏れが生じます。
この3つが決まっていない状態で自動化を始めると、事故が起きたときに誰も気づかない構造になります。
今日の1アクション:成約情報が投稿担当に届く経路があるか確認してください。
違反した場合にどうなるのか?
おとり広告は、複数の法令・規約の対象となります。
- 宅地建物取引業法:誇大広告等の禁止(第32条)に違反する場合、監督処分の対象となる可能性があります
- 景品表示法:不当表示にあたる場合、措置命令や課徴金納付命令の対象となる可能性があります
- 不動産の表示に関する公正競争規約:加盟事業者は、規約に基づく措置の対象となる可能性があります
いずれも、事業者としての信用に直接影響します。自動化による工数削減の効果と比べて、リスクの大きさが釣り合わないため、確認工程は必ず残してください。
今日の1アクション:社内の運用ルールが文書化されているか確認してください。
よくある失敗と注意点
自動投稿の運用で繰り返し起きる失敗は、次の5つです。
- 成約情報が投稿担当に届かない:削除のトリガーが発生しません。経路を設計します
- ハイライトを棚卸ししない:最も見落とされる箇所です。定期的に確認します
- 物件情報を長期の予約投稿にする:公開日までに成約する可能性が上がります
- サイト連携先の削除を確認しない:SNSで消してもサイトに残る場合があります
- 削除の基準が担当者任せ:対応漏れが生じます。基準を文書化します
加えて、成約物件以外にも、条件が変更された物件(家賃改定、募集条件の変更など)の掲載にも注意してください。実際の条件と異なる表示は、誇大広告等の禁止に触れるおそれがあります。
まとめ:今日から始める1ステップ
物件情報の自動投稿における法規制上の要点は、次のとおりです。
- 取引できない物件の掲載はおとり広告に該当するおそれがある
- 自動化の度合いが上がるほど確認工程が重要になる
- フィード投稿・ハイライト・予約投稿・サイト連携先の4箇所を確認する
- 公開前確認・成約時停止・削除基準の3つを先に決める
- 成約情報が投稿担当に届く経路を設計する
今日の1ステップ:ハイライトを開き、成約済み物件が残っていないか確認してください。SNS運用で最も見落とされやすく、かつリスクが高い箇所です。
個別の表現や運用がどこまで許されるかは事案により判断が分かれます。社内で判断がつかない場合は、宅地建物取引士や所属する公正取引協議会に確認してください。
よくある質問
成約済み物件の投稿は必ず削除すべきですか?
削除するか、成約済みである旨を明記してください。取引できない物件を取引できるかのように掲載し続けると、おとり広告に該当するおそれがあります。
予約投稿でもリスクはありますか?
あります。作成時点では募集中でも、公開日には成約している可能性があるためです。公開前に募集状況を確認する工程が必要です。
どのくらいの期間で削除すべきですか?
期間の基準ではなく、取引できなくなった時点で対応すると考えてください。成約の情報が入った時点で投稿を止める運用にするのが確実です。
違反した場合どうなりますか?
宅地建物取引業法に基づく監督処分、景品表示法に基づく措置命令等の対象となる可能性があります。不動産公正取引協議会に加盟している場合は、規約に基づく措置の対象にもなります。
自社サイトに連携している場合の注意点は?
SNS側で投稿を削除しても、サイト側に残る仕様の場合があります。削除が同期されるか導入前に確認し、されない場合は両方で削除する運用にしてください。
宅地建物取引業法 第32条(誇大広告等の禁止)/不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(不動産公正取引協議会連合会)/不当景品類及び不当表示防止法
